コーポレートブランディング - 外側と内側から浸透させる企業価値の向上
コーポレートブランディングとは、企業にブランド価値を作ること

コーポレートブランディングとは、企業が利害関係者すべてのいわゆるステークホルダーに対して、認知してほしい社会的イメージを高めるための戦略のことを言います。
『ブランディング』は目に見えない価値を生み出すこと
ブランディングといっても、物質的に存在するものではない抽象的な言葉なので、イメージするのが難しいかも知れません。
「製品は工場に、商品は店頭に、そしてブランドは頭の中にある」と言われているように、ブランドは目に見えない価値のことです。
そして、業種や企業規模の大小を問わずブランドを生み出すことがブランディングです。
『ブランディング活動』は目に見えない価値を可視化させること
身近な例をあげると、地元で美味しそうなフレンチが食べたいときは、ネットで検索して店の外観や内装、口コミで内容のよさそうなところを選びます。
実際に行ってみると洗練された落ち着いた雰囲気で、店員も教育されていて愛想もよく、料理を出す時はきちんと内容を説明してくれる。そして、味も期待以上で値段も手頃であれば、食事を楽しんだ印象が強く残ります。
おまけに帰りにシェフの挨拶や次回の割引券があれば、店の名前は高い確率で体験とともに記憶に刻まれるでしょう。まさに目に見えない価値が作られた瞬間なのです。
この飲食店のケースでは、Webサイト、店舗、従業員の接客、料理(商品)、アフターケアなどのお客さんとのすべての接点で、店が理想とするイメージを共有しています。
業界や業態によって内容は多少異なりますが、このように目に見えない価値を可視化することがブランディング活動なのです。
コーポレートブランディングはマーケティング活動の一部
企業のマーケティング戦略は、Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、 Promotion(販促)のいわゆる4Pを組み合わせたプロジェクトが一般的です。
ブランド価値が可視化され確立されていれば、これら4Pのそれぞれにおいて会社のシンボルであるロゴマークやキャッチフレーズが企業イメージを伴い、マーケティング活動に貢献します。
類似した商品の中で、価格などの条件も同等でありながら自社のものが選ばれない場合は、残念ながらブランディングがまだ十分でないと言えるでしょう。
ブランディングには種類がある

ブランディングには活動方向や対象によって下記のように分類されます。
アウターブランディングとは?
アウターブランディングは活動方向が社外であり、一般社会に対して、自社ブランドの情報を発信し理解や共感を促進する取り組みのことです。
広告やコミュニケーション活動を通じ、顧客とのあらゆる接点で共有してほしいイメージの創出を図ります。
アウターブランディングで成功すると、競合他社との差別化が可能となり、リピーターを増やすことで長期的な収益拡大につながります。
インナーブランディングとは?
インナーブランディングは活動方向が社内であり、従業員や株主、取引先の人達に自社ブランドの考え方やコンセプトを浸透させる取り組みのことです。
ブランドのミッション(社会的使命)やバリュー(価値観)を組織内で共有し、日常業務のなかで意識して取り組んでもらうことにより、企業価値を上げることを目指します。
企業ブランディング(コーポレートブランディング)
企業ブランディングは、商品をブランディングするのではなく、企業をブランディングすることです。
ブランディングの対象は、社会、従業員、株主、取引先など、会社に利害関係のあるステークホルダーで、経営理念に基づいた良い企業イメージを広げる活動になります。
一貫した優れたブランドイメージは、ビジネスのみならず優秀な人材の採用など、会社経営にも影響を及ぼします。
コーポレートブランディングに取り組む目的は?

企業がコーポレートブランディングに取り組む主な目的は以下の4つです。
競合他社との差別化(独自性)
コーポレートブランディングに取り組むことにより、他社との違いを明確化して、差別化を図ることを目指します。
商品が機能や価格で殆ど変わらなかった場合、購入する際の最終的判断はブランド価値によることが多く、イメージで差別化できていれば選ばれる確率が上がります。
信頼性の向上
コーポレートブランディングの確立で欠かせないのが、ステークホルダーに提供した価値観や思いを約束し、「良い」と認められ期待されることです。
そして、約束通りかそれ以上のパフォーマンスを見せることで、「さすが」という言葉で信頼性が高まりブランド力が強化されるのです。
逆に期待を裏切ることになれば、失望感が生まれブランド力の低下や喪失を招くことになります。
有名ブランドが欠陥商品を販売したり、不正行為が明るみとなることで、「〜ともあろうものが」と社会から非難を浴び失墜した例は、ニュースで見たことがあると思います。
認知度の向上(親しみや共感が生まれやすくなりファンができる)
ブランドの認知度が上がることで、ファンが増えることが期待できます。
かつては商品やサービスの優位性で認知度を上げることが可能でしたが、近年では類似品を扱う競合が増え商品力での差別化は困難です。
そこで、企業としての理念や目的がブランド力に大きな影響を持つようになり、企業ブランディングによる認知度の強化が注目されています。
プレミアム価値(商品・サービス価値が生まれる)
消費者が特定のブランドに対して、他社製品より高い値段でも買いたいと考えることがあり、プレミアム価格と呼ばれています。
このように指名買いされるまでブランディングに成功すれば、他社と同じ品質や機能でも高い値段で販売することが可能となり、恒常的な収益が期待できるのです。
コーポレートブランディングに取り組む企業の事例

コーポレートブランディングの成功例を海外・国内のそれぞれで見てみましょう。
海外ブランド(Apple)
Apple社のiPhoneは、今や世界中で利用されており、日本においては過半数のシェアを占めていますが、1997年に創業者のスティーブ・ジョブスが復帰したときは倒産寸前でした。
それを救ったのが、有名な「Think Different」キャンペーンで、Apple社の存在理由は「情熱を燃やす人は、世界をより良い方向へ導く」と信じ、世界を変えられると本気で信じている人を讃えるという内容でした。
この約束で事業のあり方を明示したことにより、キャンペーンの範疇を超えたブランドの方向付けとなり、今やApple社は世界一の座を獲得しています。
Apple社の企業ブランディングは、高い製品クオリティのもとに、徹底したユーザビリティにこだわりを持たせ、シンプルに統一されたデザインで世界を席巻したのです。
国内ブランド(ユニクロ)
「ユニクロ」ブランドで有名なファーストリテイリングが掲げたミッションは、下記の通りです。
「ユニクロ」ブランドで有名なファーストリテイリングが掲げたミッションは、下記の通りです。
このミッションに基づいて、「LIFE WARE:究極の普段着」という「ユニクロ」のコンセプトを打ち出し、シンプルかつ高品質な商品をリーズナブルな価格で提供しているのです。
年齢・性別や人種を超えた幅広いユーザーをとらえ、個性を抑えた汎用性の高い衣料は、まさに「究極の普段着」としてユニクロの赤いロゴマークと共に定着しています。
コーポレートブランディングを始めるために必要なこと

最後にコーポレートブランディングの手順として必要なことを解説します。
企業の理念を考える
企業理念は、会社の根幹となる考え方・価値観のことで、「企業が存在する社会的な目的」につながります。
企業理念により、社会的意義や目指す方向、他社との違い・強みを明確に示し、ステークホルダーを、会社のファンとして惹きつけ続けることが重要なポイントです。
そして、社内的に企業理念は事業計画や意思決定の軸となり、社外的には企業理念に基づいた活動によってブランドイメージが形成されていきます。
社会的貢献やステークホルダーに向けた活動を考える
企業理念を社内へ浸透させる方法として、会社のトップや管理職が率先して行動し、社内資料や研修の開催などによって社員の意識を変えていく姿勢が必要です。
その結果、個々の部門に関係なく会社のメンバー全員が一丸となり、ブランド普及を実践するのが理想です。
また、PEST分析や3C分析により自社の外部環境を分析し、企業ブランドの課題を認識したうえで企業理念の実現へ向けた対策を立案し実行します。
シンボルやキャッチフレーズでわかりやすい情報は何かを考える
企業理念の要素をデザインという形で可視化する「シンボル」や「キャッチフレーズ」を準備します。
ステークホルダーにブランドを認識されやすくするために、シンボルでは「ブランドらしい見せ方」、キャッチフレーズは「ブランドらしい言い方」を決めます。
デザインは他社と類似したものや劣るものは避け、キャッチフレーズは社内外に浸透しやすいシンプルかつインパクトのある言葉を選ぶことが大切です。
繰り返しブラッシュアップを行う
ブランドを世の中にデビューさせた後は、様々な活動を続けて定期的に成果をチェックします。
ブランド力の強化につながった活動は継続し、つながらなかった活動やブランドイメージから外れた活動は、見直しのうえ改善を図ります。
時代や市場のニーズは常に変化しますので、コーポレートブランディングも一度で終わらず絶えずブラッシュアップすることが必要です。
情報を伝えるために、Webサイトは効果的!
コーポレートブランディングにおいて、企業理念や活動状況を外部に伝えることは、情報化社会においては非常に重要です。
その外部コミュニケーションのツールの一つとして、企業のWebサイトは欠かせない存在であり、企業イメージの浸透に大きな効果を発揮します。