「事業概要シート」の作成マーケティング分析を始める前の情報整理

Webサイトの情報設計をする前に、まずは「自社が何者か」を社内で洗い出す必要があります。事前情報(インプット)が人によって違うと、担当者ごとに発信(アウトプット)にも差が生まれ、伝え方や内容が変わってしまう要因になるからです。

この記事では、Business Brief(事業概要シート)を作成し、この後のマーケティング分析や情報設計で使うための「土台」を用意する方法について解説します。

事業分析とは?

事業分析は社内で実施

事業分析とは、会社やサービスの特徴を網羅的に整理し、説明するための材料をそろえる作業です。まずはマーケティング分析や事業戦略を立てる前に、事実情報や取引の実態を洗い出すことから始めます。

なぜマーケティング分析の前に事業整理が必要なのか

「事業概要シート」としてわかりやすく用意された資料があると、マーケティング分析を行うための土台になります。さらに、担当者ごとの認識がばらつきにくくなるため、社内で「共通理解」を作りやすくなります。

まずは「どんな会社で、何をしているのか」を、初めて見る相手にも伝わる言葉を意識して書いていきます。

事業分析のやり方(マーケティング分析の前に行う準備)

事業概要シートを作る

事業概要シートは、会社そのものの情報と、提供するサービス・製品の情報を整理して一覧化するための資料です。各項目を、次の2つの観点で書き出します。

  • 事実にもとづく情報(沿革、体制、提供内容、実績 など)
  • 規格や条件にもとづく情報(提供価値、価格・納期・対応範囲 など)

項目数が多いため、事業概要シートを作成するための「無料フォーマット」を配布しています。
実際に作業される際に、ご活用ください。

まずは、事実にもとづく情報について洗い出す

事業概要シートを作成するための最初のステップは「事実にもとづく情報」を一覧にする作業です。最初から「強み」などの詳細を洗い出そうとすると時間がかかるため、かんたんな作業から進めて、シートを埋めていきましょう。

書き出す内容は「会社そのもの」と「サービスや製品ごと」に用意していきます。テンプレートを使う場合、「会社_入力」と「サービス_入力」どちらにも記入してください。

会社そのものに関する基本情報
カテゴリ項目
基本情報
  • 会社名(正式表記/略称)
  • 所在地/拠点(本社/支社/店舗など)
  • 設立年(創業年)
  • 代表者名
  • 資本金
  • 従業員数(概数でOK)
連絡手段・
受付方法
  • 代表連絡先(電話/メール/FAX)
  • 受付時間
  • 問い合わせ窓口(部署/担当)
法務・表記
  • 法人番号(必要なら)
  • 各種規約/プライバシーポリシー
  • 許認可/資格(保有していれば)
実績・
提携先
  • 取引社数(概数/期間)
  • 累計提供件数(概数)
  • 対応業界の一覧(公開可の範囲)
  • 受賞/認定/メディア掲載情報
サービスや製品に関する基本情報(サービス・製品)
カテゴリ項目
識別情報
  • サービス名(正式表記)
  • カテゴリ(社内での区分)
  • 提供形態(スポット/継続利用/都度払いなど)
  • 提供場所(店舗/訪問/オンライン等)
  • 担当部署/責任者
提供手段
  • 標準対応エリア(全国/地域/オンライン可否)
  • 提供可能な時間帯
  • 申込方法(フォーム/電話/来店等)
  • 支払い方法(現金/カード/請求書等)

項目数が多いため、事業概要シートを作成するための「無料フォーマット」を配布しています。
実際に作業される際に、ご活用ください。

事業概要シートにまとめる「4つの説明材料」

提供価値や条件(価格や納期)の整理

基本情報の次は、具体的な顧客説明のための判断材料を整理していきます。こちらは、「サービス・製品」に対し、「提供価値/対象/条件/根拠」の4つに分けて整理します。

この段階では、強みや戦略を考える必要はありません。まずは、主観ではなく、客観的な事実や実際の取引・対応の中で発生している情報を整理することに集中します。また、B2BとB2Cで情報の洗い出し観点が異なります。顧客目線での回答を意識しましょう。

  • 法人向け(B2B)社内で意思決定を進めるために、論理的説明(ROI・リスク・体制)が求められやすい
  • 個人向け(B2C)自分に合うかを判断するために、安心感(利用シーン・具体性・不安の解消)が求められやすい
用語:
  • ROI(Return on Investment/投資対効果)
  • 投資したお金・時間・人員などに対して、どれだけ利益(または効果)が返ってきたかを示す指標です。B2Bでは、施策やプロジェクトの費用対効果を測定する際に使用されます。

顧客は通常、次の4つの材料をもとにサービスを判断します。

4つの説明材料の概要
項目問い顧客が知りたいこと
提供価値結局、何をしてくれるのか?自分の悩みは解決するのか?
対象私自身(自社)に該当するか?自分にぴったりのサービスか
条件いくらで、どうやって?予算や体制に無理はないか
根拠それは、本当なのか?騙されないか、失敗しないか

提供価値:何をどう解決するのか(約束)

提供価値は、「顧客の負担・不安・リスクを減らし、相手の望む状態を実現する」というメリットについて、文章で表現します。(2~3行程度)

  • B2B:工数削減、品質向上、リスク低減、時間の短縮、コストの改善
  • B2C:使いやすさ、手間の削減、安全性、快適性、失敗しにくさ、価格に見合う価値

対象:誰のどのような状況に適しているのか

対象は、業種や規模だけでなく、相手の課題の深さ・緊急度・体制などの「状況」も含めて適合するパターンを整理します。

ここで同時に押さえたいのが、「合わないケース」も含めて整理することです。「自社では解決できない・相性が悪い状況」を言語化しておくと、営業現場の判断が揃うだけでなく、Webサイト上でも誤解を減らし、結果としてミスマッチ(無駄な問い合わせ)を防ぎやすくなります。

  • B2B:用途、工程、数量、運用条件、前提としてある環境
  • B2C:利用シーン、頻度、好み、生活環境(設置・収納等の前提)

条件:価格・提供方法・範囲・前提となる条件

条件は、顧客やユーザーが「会社や製品・サービスを選ぶ」際に、判断するための基準になる材料です。顧客やユーザーが抱きやすい不安(心理的ハードル)の視点で考えてみます。(高かったら?少なかったら?ちゃんと届く?等)

  • B2B:成果物(納品物)、保証範囲、導入支援の有無、納期条件
  • B2C:セット内容、配送、返品条件、保証期間、サポート方法

根拠:なぜ信じてよいのか(実績・事例・数値)

根拠は、事例、実績、数値結果など、第三者が確認できる情報を整理します。「言っていることが本当だ」と裏付け証拠となる材料です。

  • B2B:事例(課題・対応・結果)、公開可能な成果指標、導入後の運用実績
  • B2C:利用者の評価(レビュー、満足度)、実績(販売数、継続利用、リピート率)、比較情報(仕様・成分・性能)、安全性・耐久性・保証に関する情報(試験結果、保証条件の明確さ)

項目数が多いため、事業概要シートを作成するための「無料フォーマット」を配布しています。
業種ごとの入力事例も入っています。実際に作業される際に、ご活用ください。

社内向けメモ:非公開情報を内部的に追記

もし外部に出しにくい情報(失注理由や相性の悪い顧客、競合に関する情報等)があれば、後から判断に使うための材料として、社内メモとして残しておきましょう。

この作業を行うことで、情報設計の精度を上げるための「守りの土台(ミスマッチを防ぐフィルター)」の準備にもなります。

失注理由・数値・内部条件

ネガティブな情報や内部的な判断基準も、あとからマーケティング分析や事業改善に役に立つため、追記しておきます。

  • 数値:平均単価、粗利、成約率、継続率、納期遵守率、不良率など
  • 条件:見積りの前提(最低ロット、対応外条件、追加費用条件など)お断りしたい客層、苦手な案件
  • 失注理由:負けやすい条件(価格、納期、体制、競合の強みなど)

よく比較される競合相手との評価基準

分析で重要なのは「誰と、何で比べられているか」です。ここを押さえると、以後の施策が決めやすくなります。

  • よく比較される相手:競合2社(または代替手段2つ)
  • 判断基準:選ばれる理由の上位3つ(例:品質、納期、対応、価格など)
  • 自社が勝ちやすい条件/負けやすい条件:各1行

社内用語の棚卸し

情報を洗い出す際、社内用語や専門用語をそのまま使わず、『中学生でもわかる言葉』に置き換えて書き出すことがオススメです(用語だけ後からまとめて作業も可)。

Webサイト制作時に、そのままキャッチコピーや解説文として転用しやすくなります。

まとめ:事業概要シートは「判断の基準」を揃えるための土台

Webサイトの情報設計やマーケティング分析を進める前に、まずは「自社が何者か」を社内で同じ言葉で説明できる状態にしておくことが大切です。

情報の整理に有効なのが、会社全体と製品・サービスを分けて、提供価値/対象/条件/根拠の4つで分類した「事業概要シート」です。事実情報と、判断材料を分けて情報を集めることで、分析と発信の精度が上がり、担当者ごとの説明の差も減らせます。

POINT

  • 事実にもとづく情報をそろえることで、部署や担当者による説明の差が少なくなります
  • 4つの説明材料で整理すると、顧客説明・提案に転用しやすくなります
  • 根拠をしっかり紐づけることで、主観ではなく裏付けのある発信ができます

次のページでは、この事業概要シートを材料に、自社の強み・弱みを整理するSWOT分析を行います。シート内に入力した情報を使って、自社の競争力の源泉を洗い出していきます。

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