ターゲットは誰か?顧客を知り、相性の良いターゲットを見つける

自社の強み市場の動きを確認できたら、次は「どの相手を優先して狙うか」を明確にします。

ターゲティングは、幅広い顧客の中から、自社の製品やサービスが価値として伝わりやすく、実際に購入してくれる相手を抽出して具体的にする作業です。

ただ「誰に売れそうか」だけでなく、「どのような相手が、どのような状況だと、自社を選びやすいのか」という売りやすい相手の状況まで含めて考えます。

なぜターゲティングが必要なのか

製品やサービスは、どんな相手にも同じように選ばれるわけではありません。

例えば、飲食店を選ぶ場面でも、「日常の食事」と「特別な日のディナー」では、選び方が大きく変わります。

  • 日常の食事価格や手軽さ、入りやすさが重視される
  • 特別な日のディナー雰囲気や体験、安心感が重視される

同じ「食事」でも、状況が違えば選ばれる理由は変わります。
これは製品やサービスでも同じです。

  • 日常的な業務の外注スピードやコストが重視される
  • 重要なプロジェクトや意思決定実績や提案力、信頼性が重視される

このように、顧客は「誰か」だけでなく、どのような状況にあるかによって判断基準を変えています。

そのためターゲティングは、できるだけ多くの人を対象にするのではなく、自社の強みが活かせる相手と、相手の状況を見極めて顧客像にすることが大切です。

ターゲティングで「狙う範囲」を決める

自社の強み × 市場の需要 × 顧客の課題 = 最適なターゲット自社の強み × 市場の需要 × 顧客の課題 = 最適なターゲット

ターゲットを考えるときは、自由に思いつきで決めるものではありません。顧客は状況によって判断基準を変えますが、状況や顧客側の視点だけで決めると、事業として成立しない相手を含んでしまう可能性があります。

そのため、これまでに整理してきた自社の強み市場の需要を含めて、顧客像として狙う範囲を定めていきます。

ターゲットは「3つの条件が重なる部分」で考える

まずは、3つの条件が重なる部分を考えます。

顧客像に影響する3つの条件

  • 自社の強み(価値として提供できること)
  • 市場の需要(実際に依頼や相談が発生している領域)
  • 顧客の課題(依頼が発生する背景にある困りごと)

逆に、3つが成立していなければ、適切な顧客像とは言えません。

  • 強みはあるが需要がない → 売れない
  • 需要はあるが自社で対応できない → 提供できない
  • 課題があっても依頼につながらない → 事業として成立しない

そのため、顧客範囲を考える際は、「誰に売りたいか」よりも、「どの条件が重なる相手か」という視点で考えることが大切です。

「市場の需要」と「顧客の課題」を整理する

顧客範囲を定める前に、市場の需要と顧客の課題を確認します。

① 市場の需要(どんな依頼が発生しているか)の洗い出し

市場の需要は、「実際に発生している案件」と、市場調査で確認した「市場全体の動き」と「求められる仕事の内容の変化」を組み合わせます。

現在の需要 → 社内でよくある依頼内容や相談内容を確認する

増加傾向にある需要求められる仕事の変化(ミクロ環境)から、増加傾向にある依頼内容や新しい業務領域を確認する。また、市場全体の動き(マクロ環境)もあわせて確認することで、今後どの領域の需要が伸びていく可能性があるのかも見ておく。

② 顧客の課題(なぜ困っているのか)の洗い出し

顧客の課題は、「①市場の需要」の中から、具体的な課題が何かを読み取ります。

現在の課題 → 社内でよくある依頼内容や相談内容ををもとに、顧客自身の課題を把握する

課題解決のために重視しているもの依頼先の選ばれ方から、顧客が比較時に何を重視しているかを見る → そこから、どのような点で困っているのかを読み取る

増えている相談(増えている課題)求められる仕事の変化(ミクロ環境)から、顧客がどのような依頼をしたいかを見る → そこから、顧客が自分で対応しきれない、または外注したいと考えている内容を読み取る

読み取った顧客課題を、①市場の需要と接続させ、表にまとめていきます。

狙うべき顧客範囲の具体的な洗い出し

顧客範囲の洗い出しは次のように作業を行います。

① 需要・課題・強みを書き出す

まず、市場の需要・顧客の課題・自社の強み(SWOT分析で対応済み)を書き出します。

工務店の場合の例
市場の需要顧客の課題自社の強み
部分的なリフォーム(キッチン・水回りなど)
の依頼が増えている
  • 全面リフォームは費用が高く、部分的に対応したい
  • 複数の小規模工事を依頼する必要がある
  • 複数業者への依頼が手間になっている
  • 低価格
  • デザイン性が高い
  • 設計士がいる
  • 現場管理できる
  • 柔軟な工程調整ができる
  • 設計から施工まで一括対応できる
住みながらのリフォームの依頼が増えている
  • 仮住まいの費用を抑えたい
  • 生活を止めずに工事を進めたい
  • 工程調整や生活への影響の管理が難しい
追加リフォームや修繕の依頼が増えている
  • 小規模な修繕箇所が増えている
  • 信頼できる依頼先を探している
  • 部分工事に対応してもらえる業者が分からない

② 候補を広く書き出し、「成立しそうな組み合わせ」を複数作る

部分リフォーム × 複数業者が手間 × 一括対応できる
→ 部分リフォームを検討しているが、複数業者への依頼が手間な案件

部分リフォーム × 部分的に対応したい × 低価格
→ 必要な部分だけ費用を抑えてリフォームしたい案件

住みながらリフォーム × 工程調整が難しい × 柔軟な工程調整ができる
→ 住みながらリフォームを進めたいが、工程調整が難しい案件

追加リフォーム・修繕 × 部分工事に対応してもらえる業者が分からない × 一括対応できる
→ 小規模修繕をまとめて依頼したい案件

③ 成立しないものを除外する

組み合わせの観点は「その組み合わせで実際の仕事が成立するか」です。もし、成立しない組み合わせである場合、除外しておきます。

住みながらリフォーム × 工程調整が難しい × デザイン性が高い
→ つながっていない(工程調整の課題とデザイン性は直接関係しない)

追加リフォーム・修繕 × 信頼できる依頼先 × 低価格
→ つながっていない(信頼性を重視する場合、価格だけでは判断されにくい)

顧客範囲を特定できたら、次は具体的な顧客像にするための抽出作業と言語化に進みます。

相性の良い顧客条件を言語化する

ビジネスマッチング

狙うべき範囲を絞ったら、さらに、その中にいる顧客像を詳しく見ていきます。

顧客像を整理するための5つの確認ポイント

顧客像は、次の5つの観点から具体的にします。

顧客像を整理するときの観点
観点見るべきポイント
属性(どのような相手か)業種 / 規模 / 地域 / 立場 / 経験 / 組織形態(法人 / 個人)
状況(どのような検討段階か)課題認識前 / 情報収集 / 比較中 / 決定直前 / 急ぎ
重視すること(何を基準に選ぶか)価格 / スピード / 実績 / 専門性 / 相談しやすさ / 品質
役割(誰が判断に関わるか)情報収集者 / 比較検討者 / 決裁者 / 利用者
継続性(関係が続く可能性)単発 / 追加案件 / 継続利用 / 紹介

これらは単体ではなく、それぞれを組み合わせます。特に「状況」と「重視すること」の2つの観点から考えると、顧客の判断基準が見えやすくなります。

顧客像の作り方(手順)

① 範囲の中から1つのパターンを選ぶ

洗い出した「狙うべき顧客範囲」の中から、1つ選びます。
(例)短期間でリフォームしたいが、段取りができない案件

② 観点を埋める

選んだパターンに対して、5つの観点を当てはめます。

  • 属性:戸建て住宅を所有している個人
  • 状況:キッチンや水回りなど部分的なリフォームを検討中
  • 重視すること:手間の少なさ、一括対応、費用の分かりやすさ
  • 役割:発注者本人が意思決定
  • 継続性:追加工事や修繕の相談につながる可能性あり

③ 一文にまとめる

最後に、顧客像を一文で表現します。顧客像は、次の3点を含めて表現します。

誰が、どのような状況で、何を重視して選ぶか

(例)キッチンや水回りなど部分的なリフォームを検討しているが、複数業者への依頼が手間で、一括対応と手間の少なさを重視して依頼先を選ぶ住宅所有者

ターゲット設定の例(良い例・悪い例)

ターゲット設定は、できるだけ具体的に考えます。広すぎると、どのような相手を狙うのかが曖昧になるからです。

悪い例(広すぎる設定)

  • 中小企業すべて
  • 地域の人全般
  • 単身世帯

これらは一見わかりやすいようで、実際には相手の判断基準がみえず、範囲が広すぎます。つまり、施策を検討する際に具体的になりずらくなります。

良い例(具体的に設定)

  • キッチンや水回りなど部分的なリフォームを検討しており、複数業者への依頼が手間なため、設計から施工まで一括対応できる施工会社を探している住宅所有者
  • キッチンや水回りなど部分的なリフォームを検討しており、必要な部分だけ改修したいと考え、低価格で対応できる施工会社を探している住宅所有者
  • 住みながらリフォームを進める必要があり、生活への影響に不安があるため、柔軟な工程調整と現場管理ができる工務店を探しているファミリー世帯
  • 小規模な修繕や追加リフォームを検討しているが、部分工事に対応してもらえる業者が分からず、まとめて依頼できる施工会社を探している住宅所有者

顧客像は1つに絞る必要はありません。自社の強みに応じて、複数のパターンを持つことで、営業や集客の方向性を検討しやすくなります。

さらにこの顧客像は、次のステップであるポジショニングSWOTクロス分析の前提になります。

まとめ:ターゲティングは、自社に合う顧客を明確にすること

ターゲティングとは、単に幅広い顧客の中から人を選ぶことではありません。

自社の強みと市場の需要、顧客の課題が重なる領域を見つけ、その中で選ばれやすい顧客像を具体的にすることです。

ターゲティングのステップ

  1. 強み・需要・課題をもとに、狙うべき顧客の範囲を決める
  2. その中から、状況や重視点をもとに顧客像を具体的にする
  3. 最後に、「誰が・どのような状況で・何を重視して選ぶか」を一文で表現する

最後の一文が、そのまま「どの顧客に対して、打ち出すべきか」というターゲットの判断基準になります。

次のページでは、このターゲットに対して、自社が選ばれやすい条件を分析していきます。

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