市場の立ち位置の決め方市場の地図から勝てる場所を見つける

自社が市場の中で優位になるには、市場全体で勝ちやすい状況を探し、「立ち位置」を定める必要があります。

この記事では、これまでに整理した「市場動向」と「顧客像」をもとに、自社がどのような条件だと競合に勝ちやすく、顧客に選ばれやすいポジションとして定義できるのかを解説します。

顧客は何をもとに意思決定するのか?

自社の強みを伝えるとき、多くの場合「うちは◯◯が強いです」と自社目線で語ってしまいがちです。しかし顧客は、提示された強みだけで依頼先を選ぶわけではありません。

なぜなら顧客は、複数の選択肢の中から、そのときの状況に合ったものを選ぼうとするからです。

本当のライバルは「同業」ではなく、別の選択肢かもしれない

顧客の頭の中で比較されている対象は、同業他社だけではありません。

  • 競合他社
  • 代替手段
  • 内製
  • 現状維持

顧客は、あなたの会社を「同業A社」と比べるだけではなく、「そもそも発注しない/他の方法で済ます」という選択肢とも比較しています。

この視点を見落とすと、「同業比較に勝つための方法」だけを強化してしまい、本当に必要な「内製・代替に勝つ理由」が抜け落ちてしまいます。

選ばれ方は状況で変わる(価格/安心/スピード/専門性)

さらに、顧客が決定の際に「何を重視するか」は、その時の状況でも変わります。

  • 価格:とにかく費用を抑えたいとき(稟議が厳しい/予算がない)
  • スピード:間に合わせる必要があるとき(展示会、受入体制、決算などの締切り、繁忙期)
  • 専門性:自社では判断できないとき(業界特有/専門外の設計、規制、技術、高難易度)
  • 安心:失敗が許されないとき(基幹に関わること・法務・セキュリティ・炎上リスク)

選ばれるためには、ただ「良いサービス」「良い製品」だけでなく、相手の状況(課題)に合わせて強みを伝えると、相手が「自分ごと」ととらえ、興味・関心を持ちやすくなります。

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市場の中での立ち位置を定める

市場を俯瞰してみる

強みの価値は、状況次第で有利になることもあれば、あまり価値がない、と判断されることもあります。ここからは、強みの価値を高めるために、市場の中での自社と競合の位置関係を整理して戦いやすい場所を特定していきます。

ポイントは、競合が少なく差別化しやすいブルーオーシャンと、競合が多く競争が激しくなりやすいレッドオーシャンを俯瞰的にとらえ、勝ちやすい場所を選択することです。

① ターゲット候補の中から戦う領域(需要 × 課題)を選ぶ

ポジショニングでは、ターゲティングで作成した顧客範囲から、「需要 × 課題」の組み合わせで戦う領域を選び、分析を行います。

  • 部分リフォーム × 複数業者への依頼が手間
  • 部分リフォーム × 必要な部分だけ費用を抑えたい
  • 住みながらリフォーム × 工程調整が難しい
  • 追加リフォーム・修繕 × 部分工事に対応してもらえる業者が分からない

複数の候補がある場合、それぞれについて②競合確認を行います。

② 戦う領域(需要 × 課題)の中から顧客の選択肢(競合)を確認する

競合は、同業他社の社名を洗い出すより、「顧客が比較しうる選択肢の全体像」をとらえることが大切です。

①で選んだ戦う領域(需要 × 課題)に対して、顧客が比較しうる方法(他社サービス・ツール・内製など)を5〜10種類洗い出します。次に、それぞれの選択肢を、4つの観点で分類します。

  • 競合の観点は、「業界ごとの判断基準」を加えるとより詳細に分類できます。また、B2Cの場合は観点が異なるため注意が必要です。顧客が何をもとに選択するか、が基準になります。

【種類】

  • 同業:競合他社
  • 代替:代替ツール、別業種の類似サービス、外部プラットフォーム(運用できる仕組み)
  • 内製:顧客側の担当者や現場メンバーによる対応

【提供タイプ】

  • 量産:テンプレート(固定メニュー)がある、元値が安い
  • スピード:スピード重視、時間削減のシステムがある
  • 特化:業界・領域に特化、専門的な機能がある、代替がない
  • 高品質:設計がしっかりしている、品質が担保されている、個別対応、リスクが低い

【価格帯】

  • 高価格
  • 中価格
  • 低価格

【提供範囲】

  • 一部対応(部分的な対応)
  • 一括対応(まとめて対応)
  • 継続支援(長期的な支援)

次のような表にまとめると理解しやすいです。

(例)「部分リフォーム」×「複数業者が手間」に対する競合分布図
種類競合提供タイプ価格帯提供範囲
同業工務店 A社
(総合対応型)
高品質中価格一括対応
同業リフォーム会社 B社
(水回り専門)
特化低価格部分対応
別業種家電量販店の
リフォームサービス
量産低価格部分対応
別業種ホームセンターの
リフォームサービス
量産低価格部分対応
代替リフォーム仲介サイト
(紹介サービス)
スピード低価格部分対応
内製社内スタッフでDIY-低価格部分対応

③ ブルーオーシャン:どこが勝ちやすい場所か?

勝ちやすい場所は、次の掛け算で考えます。

勝ちやすい場所 = 顧客の状況 × 判断基準 × 競合が弱い領域

③-① 顧客の状況を考える

最初に、「部分リフォーム × 複数業者が手間」という組み合わせをもとに、顧客の状況を考えます。

  • 複数の業者に依頼する必要がある
  • どの業者に依頼すればよいか分からない
  • 工事の調整や段取りが難しい
  • 必要な工事範囲が分からない

課題の見つけ方については、課題(弱み)を「検証項目」に変換する方法も参照してください。

③-② 顧客の判断基準を考える

③-①の顧客の状況から、次は「何を重視するか」を考えます。

  • 複数の業者に依頼する必要がある → 一括対応できると良い
  • どの業者に依頼すればよいか分からない → わかりやすい回答をくれる業者が良い
  • 工事の調整や段取りが難しい → スケジュール管理できると良い
  • 必要な範囲が分からない → 専門的な提案ができると良い

判断基準の見つけ方については、ターゲティング(5つの確認ポイント)も参照してください。

③-③ 判断基準をもとに、競合が少ない場所を探す

②競合確認で確認した競合分布図をもとに、戦いやすい場所を探します。

例えば、「一括対応できると良い」という判断基準であるにも関わらず、「部分対応」の競合しかいなければ、そこが戦いやすい場所になります。

また、判断基準は1つではなく、複数の組み合わせで考えます。

例えば、競合の多くが「低価格」を強みにしている場合でも、「一括対応」と「低価格」の両方を満たす競合が少なければ、その組み合わせはブルーオーシャンになります。

このように、判断基準の組み合わせから、競合が少ない場所を探します。

レッドオーシャン:避けたい場所も知っておくと判断に使える

勝ちやすい場所は優位性を見つけやすい領域ですが、避けたい場所を確認することで、やったとしても負荷が大きく、競合が強い領域を知ることができます。

避けるべき場所は、次の掛け算で考えます。

避けるべき場所 = 顧客の状況 × 判断基準 × 競合が強い領域

顧客の状況判断基準は、②競合確認から、競合が強い分布を確認します。

判断基準は1つだけでなく、ブルーオーシャンと同様に「複数の組み合わせ」で考えます。例えば、「低価格」かつ「量産」などの条件で競合が多い場合、その領域はレッドオーシャンと判断できます。

必要に応じて、価格帯や提供範囲などの条件も組み合わせることで、より具体的に競争が激しい領域を知ることができます。

④ ポジショニングを一文で定義する

ここまでで、市場の中での勝ちやすい場所が見えてきました。最後に、その条件をもとに、自社の立ち位置を一文で定義します。

誰の、どのような状況で、何を重視して選ぶかに対し、どのような役割を担う会社として位置づけるか

③で洗い出した顧客の状況と重視するものに対し、自社が「どのような役割を担う会社として位置づけるか」を定義します。

例:複数の部分的なリフォームを検討しているが、それぞれの業者への依頼が手間で、工事範囲の判断や段取りに不安がある住宅所有者に対し、設計から施工まで一括対応で進めるリフォーム支援

まとめ:ポジショニングは、市場の中での立ち位置を明確にすること

ポジショニングでは、ターゲティングで作った顧客像と、作成した競合分布図をもとに、自社が勝ちやすい立ち位置を見つけました。

ポジショニングのステップ

  1. 市場の需要 × 顧客課題から、戦う領域を選ぶ
  2. 顧客の選択肢(競合)を洗い出す
  3. 顧客の状況と判断基準から、勝ちやすい場所を特定する
  4. 最後に「誰が・どのような状況で・何を重視して選ぶか」を一文で表現する

最後の一文が、「どの顧客に対して、どのような価値を打ち出すか」という立ち位置を考える基準になります。

次のページでは、この立ち位置をもとに、具体的な戦略の方向性を明確にします。

次ページ:事業の差別化戦略を決め、選ばれる理由を作る