差別化戦略戦略を決めて「選ばれる理由」を作る

STEP2では、市場分析ターゲティングポジショニングを行い、「市場の中で、誰に向けて、どこで戦うか。自社の役割は?」という顧客像と市場の中での優位性を定義しました。

次に、その中で「どう戦うか」という方針を決めるために、差別化に向けた戦略テーマを用意します。さらに、戦略テーマを評価し、戦略優先順位を決めた上で、「選ばれる理由」を作ります。

優位性を使って、事業の戦略テーマを作る

戦略をたてる

STEP2で定義した「ターゲティング」と「ポジショニング」を使って、ここから「事業の戦略テーマ」を用意していきます。作業には少し時間がかかりますが、1つ1つ対応すれば効果的な戦略を作ることができます。

ターゲティングとポジショニングのおさらい

ここでは、「小売業のブランド店舗」として、下記の例を使います。

小規模小売ブランド店舗のターゲティング例
市場の需要顧客の課題自社の強み
個性・ストーリー商品需要の増加
  • 個性的な商品が見つからない
  • 自分に合うか分からない
  • 品質が不安
  • 価格の妥当性が分からない
  • 自社ブランド商品がある
  • 小ロット・限定商品が作れる
  • ブランドストーリーがある
  • 柔軟な商品開発ができる
  • 作り手・店舗の体験価値がある
SNS・ファンコミュニティ需要の拡大
  • 情報が多すぎる
  • 信頼できる発信が分からない
  • 広告と口コミの区別が難しい
  • 実際の商品が分からない
ブランドコラボ・限定商品の需要増加
  • 限定商品がいつ出るか分からない
  • 限定商品がすぐ売り切れる
  • 自分の好みに合う限定商品が少ない
ターゲット像
  • 他人と被らない商品を探しており、商品の個性や独自性を重視して商品を選ぶ消費者
  • SNSで見かけた商品が気になっているが、実際の商品を見たことがなく、店舗で直接確認して選びたい消費者
  • 既製品では自分の好みに合う商品が少なく、自分の好みに合わせた商品やカスタマイズできる商品を求める消費者

小規模小売りブランド店舗のポジショニング例

ここでは割愛しますが、ポジショニングで対応した競合確認も実施した上で、自社の立ち位置を下記のように決めました。競合の観点は次の内容で分布しました。

競合の観点:ブランド独自性 | 商品開発柔軟性 | 顧客体験 | 価格

個性・ストーリー商品需要の増加 × 個性的な商品が見つからない ×(ブランド独自性が高い × 商品開発柔軟性が高い × 顧客体験が高い)→ 他人と被らない商品を求めているが、既存売り場では個性的なブランドに出会えない消費者に対し、独自の世界観を持つブランドに出会えるセレクト型ブランド店舗

SNS・ファンコミュニティ需要の拡大 × 実際の商品が分からない ×(ブランド独自性が高い × 商品開発柔軟性が高い × 顧客体験が高い)→ SNSで見つけた商品に関心はあるが、実物が分からず購入を迷っている消費者に対し、実店舗でブランドや商品の体験を通じて納得して選べる場を提供するブランド店舗

ブランドコラボ・限定商品需要 × 自分の好みに合う限定商品が少ない×(ブランド独自性が高い × 商品開発柔軟性が高い × 中価格)→ 限定商品に関心はあるが、既存の限定商品では好みに合う商品が少ない消費者に対し、小ロットで好みに寄せた商品企画を行うブランド店舗

差別化のための戦略テーマ候補の作成

戦略テーマ候補は、ターゲットが求めている価値 × 自社の立ち位置(ポジショニング)を組み合わせて作ります。

戦略テーマ候補 = ターゲットが求めている価値 × 自社の立ち位置

さきほどの例をもとに、戦略テーマ候補を組み立てます。

  • 個性・独自性のある商品 × 独自の世界観を持つブランドに出会えるセレクト型ブランド店舗

    • 個性的なブランド商品を増やす
    • 世界観のあるブランドをそろえる
    • 他店にない商品を増やす
    → 他店にない個性的なブランド商品やシリーズを増やす
  • 気になる商品の実物確認 × 実店舗でブランドや商品の体験を通じて納得して選べる場を提供するブランド店舗

    • 実際に見て選べる店舗づくり
    • 体験できる売場づくり
    • 商品説明や接客の強化
    → 実際に見て選べる体験型の売場づくり
  • 自分好み・専用の限定商品 × 小ロットで好みに寄せた商品企画を行うブランド店舗

    • 限定商品を増やす
    • 好みに合わせた商品を作る
    • 小ロット商品を増やす
    → 小ロットの限定・カスタマイズ商品を増やす

戦略テーマ候補を作成したら、次はそれぞれの戦略の実現可能性と優先順位を見ていきます。

関連記事

戦略テーマの評価を実施

戦略テーマの評価戦略テーマの評価
小規模小売ブランド店舗のSWOT例
強み(Strength)弱み(Weakness)
  • 自社ブランド商品がある
  • 小ロット・限定商品が作れる
  • ブランドストーリーがある
  • 柔軟な商品開発ができる
  • 作り手・店舗の体験価値がある
  • 生産量が少ない
  • 認知が低い
  • 販路が少ない(店舗中心)
  • WEB活用が弱い
  • 人手不足
機会(Opportunities)脅威(Threats)
  • 小規模ブランド需要の増加
  • SNSによるブランド発見の増加
  • 限定商品・希少性需要
  • EC市場の拡大
  • ブランド共感購買の増加
  • 大手ブランドとの競争
  • 低価格ブランドの増加
  • 類似小規模ブランドの増加
  • EC競争の激化
  • 広告コストの上昇

4つの観点から戦略テーマごとに評価を行う

作成した戦略テーマは、次の4つの観点から点数評価を行います。点数は1~5点までの間で採点し、あとから優先順位を決めるために使います。

  • 市場性(需要・成長・持続性)市場(Opportunities)が成長するか?(トレンドが持続しそうか、それとも縮小しそうか?)
  • 競争優位性(差別化・模倣困難性)自社の強み(Strength)が競争環境(Threat)に対して優位に働くか?(競合に簡単に模倣されないか)
  • 実行可能性(リソース・コスト・収益性)自社の強み(Strength)や弱み(Weakness)を踏まえて、実行可能か?(リソースやスキルなどの内部事情を考慮)
  • ブランド適合性(理念・一貫性)自社の価値観(理念や経営方針)と一致しているか?

特に「実行可能性」については、戦略価値とは別に「すぐにできるか」「実行までに時間がかかるか」という評価になるため、状況をよく考えましょう。

スコアリングによる戦略の優先順位決定

さきほど作った戦略テーマ候補をそれぞれに評価します。評価のポイントを考慮しながら点数をつけていきます。

  • 市場性:将来の成長期待(1点)~ すでに強い需要がある(5点)
  • 競争優位性:誰でもできる(1点)~ 自社固有の資産(ブランド・技術・関係性)で模倣が困難(5点)
  • 実行可能性:現状すぐにはできない(1点)~ 既存リソースですぐに着手可能(5点)
  • ブランド適合性:ブランドとはあまり関係ない(1点)~ ブランドの中心価値になる(5点)
戦略テーマ候補のスコアリング
観点個性的
ブランド拡充
体験型
売場づくり
小ロット
限定商品
市場性544
競争優位性455
実行可能性325
ブランド適合性554
合計点171618

スコアリングの結果、各戦略テーマの優先順位は以下のようになりました。

  1. 小ロット限定商品:実行しやすく、短期収益につながりやすい
  2. ブランド商品強化:中長期の差別化の核になる。実行までに少し時間がかかる
  3. 体験型売場:差別化を強めることができるが、実際にやるには接客改善や店舗業務の改善が必要で負荷が高い

優先順位は単純なスコアだけでなく、「短期の収益性」「長期のブランド構築」「リソース制約」も踏まえて判断します。すぐにやるべきか?それとも将来に向けてやるべきか?という判断が必要です。

具体的な実行計画については、売れる仕組み(戦略)を作るで解説します。

「選ばれる理由」を作る

Unique Selling Proposition

事業の戦略テーマの優先順位を決めたら、次は「選ばれる理由」を具体的にします。

選ばれる理由とは?

選ばれる理由とは、顧客が「この店の商品やサービスを選ぶ理由」を一言で表したものです。

顧客は「商品そのもの」だけでなく、買うことによって得られる「状態の変化」や「感情の変化」にお金を払います。

たとえば、条件だけで選んだ場合、「近いから」「今しか買えないから」「安いから」などが理由になりますが、選ばれる理由をきちんと設定すると「改善できるから」「自分に合っているから」「安心して選べるから」といった、支払いを後押しする心理的な動機を提示することができます。

このように、ここで購入する理由を明確にすることで、顧客は納得して対価を払うことができるようになります。

戦略テーマごとに選ばれる理由を用意する

選ばれる理由は、次の流れで順番に作業し、1つの文として作ることができます。

【選ばれる理由の作り方】

  • 戦略テーマごとに「顧客が得られるもの(BeforeとAfter)」を考える
  • 「○○ができる店」の形式にする

それぞれ戦略テーマごとに優先順位の高いものから作業します。

  • 小ロットの限定・カスタマイズ商品を増やす

    顧客が得られるもの:自分専用の商品にカスタマイズできる

    → 既製品ではなく、自分の好みに合わせた商品を作れる店
  • 他店にない個性的なブランド商品やシリーズを増やす

    顧客が得られるもの:個性的でユニークな商品を見つけられる

    → 他では手に入らない、独自の世界観を持つブランド商品が見つかる店
  • 実際に見て選べる体験型の売場づくり

    顧客が得られるもの:納得して商品を選べる

    → インターネットで得た情報を、直接試したり説明を受けて買うことが出来る店

現時点では、戦略テーマの中でB2B寄りの戦略が優先度として高くなっていますが、次のマーケティングミックスで価格や提供方法、対応可能な範囲などの具体的な実行計画を検討した上で中身を調整します。

まとめ:戦略テーマと選ばれる理由の作り方

本記事では、STEP2で整理したターゲティングとポジショニングをもとに、差別化のための戦略テーマを作成しました。

さらに、各戦略テーマを「市場性」「競争優位性」「実行可能性」「ブランド適合性」の観点から評価し、優先順位を決定しました。

戦略テーマ設計と「選ばれる理由」作成の流れ

  1. ターゲティングとポジショニングから戦略テーマ候補を作る
  2. 複数の戦略テーマを評価して、優先順位を決める
  3. 戦略テーマごとに、選ばれる理由を「○○ができる店」として言語化する

これによって、事業として「どう戦うか」と「なぜ選ばれるのか」という戦略の方向性が見えてきました。

次のページでは、この戦略方向性をもとに、具体的な売り方の中身について検討します。

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